東京高等裁判所 昭和33年(う)609号 判決
被告人 佐久間寛子
〔抄 録〕
所論は要するに、原判決は主文第二項に於て、関東信越地区麻薬取締官事務所に保管中の差押麻薬(昭和三十年東地庁外領第三五二七号の一乃至三)はこれを没収する旨宣告し、証拠の標目には関東信越地区麻薬取締官事務所に保管中の麻薬十四包(昭和三十年東地庁外領第三五二七号の一乃至三)を掲記して居るも、記録編綴の昭和三十年十月二十日附麻薬取締官作成の捜索差押調書の押収品目録の記載(記録五三丁)証拠金品総目録の記載(記録一九一丁)によれば、一、麻薬ヘロイン一包、二、同右十二包、三、同右二包とあつて関東信越地区麻薬取締官事務所に保管中の麻薬は合計十五包であること明瞭で、原判決の主文は没収すべき麻薬の量の明示を欠くか、麻薬一包の没収を遺脱したもので、結局原判決には理由にくいちがいがあると謂うに在る。よつて記録を調査するに、原判決が主文第二項に於て所論摘録のような没収の言渡をなし、証拠の標目に於て原判示第二事実の対応証拠の一として所論摘記のように掲記していることは所論のとおりである。而して原判示第二事実には被告人は法定の除外事由がないのに昭和三十年十月二十日頃昭島市郷地町百七十八番地居宅に於て塩酸ジアセチールモルヒネを含有する麻薬粉末十四包合計〇、一五五八瓦を所持した旨の昭和三十年十二月十日附起訴状記載の公訴事実通りの事実を認定して居り、原審が適法に証拠調をした昭和三十年十月二十日附麻薬取締官作成の捜索差押調書添付押収品目録証拠金品総目録昭和三十年十一月二日附厚生技官朝比奈晴世外二名作成の鑑定書によれば昭和三十年東地庁外領第三五二七号ノ一は麻薬ヘロイン一包徴量、同号ノ二は同十二包〇、一二六六瓦、同号の三は同二包〇、〇二九二瓦であつて、原判示第二事実認定の十四包とは同号の二及び三であることが窺われるのであるが、主文第二項に所謂関東信越地区麻薬取締官事務所に保管中の差押麻薬(昭和三十年東地庁外領第三五二七号の一乃至三)は合計十五包であることは洵に所論のとおりである。然らば原判決は結局其の理由に於て犯罪事実として麻薬粉末十四包の不法所持を認定し乍ら之に関する没収として其の主文に於て麻薬粉末十五包の没収を宣告したものであつて、其の主文と理由との間にくいちがいがあることに帰し原判決は此の点に於て破棄を免れない。
(中西 山田 鈴木良)